6月11日(水)より開催の京都高島屋S.C.「イラストレーター45周年 鈴木英人の世界展」に展示予定のリトグラフ作品を紹介します。

TIEMANN CLEANERS 1987年

イメージサイズ 479×673mm リトグラフ 額装価格:  750,000(税別) 展示販売限定

わたしは、この一枚を描き始める以前から、いや、それよりずっと以前から楽しみにしていた。
そういえば、わたしはファインダーにこの風景が入った時から喉が鳴っていた。
「う~ん」とうなりながら、発見の喜びに浸りながらシャッターを押していた。
ほんとうに大袈裟な表現をしてしまったが、わたしにとっては、 これぞ典型的アメリカの光景として輝いていて、おあつらえ向きだったのだから。
山水画で言えば、3拍子揃っていることと同様に、条件が難なくアメリカして しまっている。
柔らかいTIEMANNという文字とゴシックで固い袋文字CLEANERSの組み合わせはアメリカ看板の典型として美しい表情を見せている。
何でもない古いビルの煉瓦と白フチの窓に、黒く塗られた非常階段が濃い影を落していて、これも良い。
手前に駐車している2台の乗用車も秀逸だ。
色といい高級車でなく大衆車であることが、目立つことなくこの画面にマッチングしている。
この“AVENUE”42点のシリーズのなかで、最もおあつらえむきのアメリカだった。

CAPE COD BEACH 1987年

イメージサイズ 478×673mm リトグラフ 額装価格: 1,000,000(税別) 展示販売限定

こんな絵柄を選んだのは、わたしの一時的な迷いなのかもしれない。
この絵は、わたしの描く典型的なアメリカの匂いが、ひとかけらもないからだ。
この絵柄の部分でみると、海というよりも砂を描いている。
砂上の人の足跡が、とても面白かったからだ。
アメリカというよりも、普遍の風景のテーマが、この絵柄にはあった。
こんな絵柄を選んでしまうと、あらためて自然をテーマにした風景の描写の難しさに泣かされてしまう。
無数の人々の足跡と、木のフェンスが砂上に落す影の見せてくれる変化に富んだ表情に魅かれたのだ。

PLYMOUTH 1988年

イメージサイズ  800×568mm リトグラフ 額装価格: 800,000(税別) 展示販売限定(現品限り)

PLYMOUTH

マイアミビーチ・シティを好きになってしまったことは、このPLYMOUTHホテルのトロピカル・デコに大いなる理由があるのだが、それだけではない。
もちろん色彩もトロピカルで、ウェットな気候もいいが、走っている車が更に良い。
マイアミ・バイスではドーン・ジョンソンがマイアミ・スタイルでフェラーリ・テスタロッサなどというスーパーカーに乗って多くのファンを熱くさせているが、ぼくの好きな車は、やはりこの絵柄のようなタイプだ。
1940~50年 代ぐらいに作られたステュード・ベーカーだ。
色も良いが、フロントか、リアかチョット見間違えてしまうような、とぼけたデザインが嬉しい。
PLYMOUTHホテルのためにわざわざ用意されたような、驚く程見事なマッチングだ。
空は程良くウェットなジャングル色で、建物は何とも他に類を持たな い色彩を配して、コバルトとマリンの深いブルーに塗られたステュード・ベーカーが正面と正面を向かい合って、不思議な構図だが、いま特にぼくは、この絵を気に入っている。

HOTEL CARLYLE 1988年

イメージサイズ  478×671mm リトグラフ 額装価格:  800,000(税別)展示販売限定

1940年代から50年代にマイアミの小さな島に栄えたトロピカル・デコ。
アールデコの様式をマイアミ風に昇華したホテルのデザインは世界に類を見ない。
キラキラと花の色が配色されて、曲線と直線が女性のボディラインと宝石の放つ光線の組み合わせの様にデザインされて、今に蘇えっている。
このホテル・カーライルとハドソン・ランブラーの組み合わせは、ぼくにとっての絶妙のバランスと言える。
実在する建物と車を合わせてビジュアルコンポジションをつくりなさいと言われたら、こんな絶妙はないだろう。
それ程、珍しいモノとモノを組み合わせたのだ。
ハドソン・ランブラーも今はもうほとんど見ることのないアメリカ の大衆車で、1950年代に一番華開いた車なのだ。
このピンクも実在の色なのです。

EMERALD SHAKE 1988年

イメージサイズ  478×671mm リトグラフ 額装価格: 750,000(税別)展示販売限定

「旧型のバートラムなんか描いちゃって、結構いいじゃん」とぼくの友人のT君はつぶやいた。
典型的な南方の入江といった風景ですが、T君は船(ヨット)の専門家なので、船からこの絵に入ってきました。
アメリカより南方の島々のリゾートしている入江の典型でしょう。
ピンクのホテルは、マイアミのアールデコ風、またキーウエストのパパ・ヘミングウェイ・コロニアル風とでも言いましょうか、こんなところなら、ワニが生息していても不思議はないし、ウェットな空気にまとわりつかれても不快感などという指数は現われない。
この光景もぼくが撮影したものではないがこんな風景のたくさんある所をいつも探している。
この海を描くシリーズは40点以上を2年程描き上げるつもりでいる。
この絵のカリブ海も行きたいが、アメリカイーストコーストも再び訪れたい。
そしてその足でヨーロッパにもまた行きたいと思っている。
T君がヨーロッパなど世界のヨットハーバーというテーマの取材旅行に出掛けると言っているが、ぼくもつれて行って欲しいと思っているくらいに、こんな美しい入江やハーバーを描きたいと思う日々なのです。

WONDERFUL VIEW OF CANAL 1991年

イメージサイズ  478×670mm リトグラフ 額装価格: 650,000(税別)  展示販売限定(現品限り)

WONDERFUL VIEW OF CANAL

マイアミは運河の街だ。
本当に運河だらけである。
人々は挙って運河添いに家を建て、水路に船を置く。
木々の枝のように張り巡らせて、増幅し続けていく水路を船で繋なぐ。
運河といえばベネチアという美しい古典的水路もあるが、根元で違っている。
ベネチアのそれは生活路であって、陸路活用の必然を水路に置き換えざるを得なかった結果として成立している。
マイアミは生活路ではなく、あくまでリゾート水路なのだ。
もちろん陸路も充分に活用されているので、水路に糧を求める必然など微塵もない。
日本だって、運河は生活路であって、リゾート性などほとんどナイといっても過言ではないだろう。
「いいなー!いいなー!アメ リカーナはいいよなー!」と少々、ひがんで言いたくなる。
で、まあこんな風景がそこいら中にあるわけで、運河の対岸はなんとアメリカーナの普通の人々の家々なのです。

THE DAY OFF ON CANAL 1991年

イメージサイズ  479×342mm リトグラフ 額装価格: 400,000(税別)展示販売限定

THE DAY OFF ON CANAL

トロール船を小さくしたようなトローリングのクルーザーが、運河にブルーマーリンを大漁に積んで、勝ち誇った様に白い波を大きく立てながら帰って来たのは 昨日の夕方だった。
クルー達にその日の内に手入れをされて、魚の残骸ひとつ残らず洗い流してもらって、クルーを数人昨夜から乗せたままで、今日は休息である。
澄み渡る青空は水面をエメラルド色に輝かせて、船体に美しい反映を繰り返している。
その風の小さな囁きで大きな船がほんの少し揺れると、水面に穏やかな波を作り出す。
その波は美しい色彩となって、ジグソーパズルのようなラインを創造してくれて、たまらないEIZIN好みの風景を見せてくれる。

QUIET CREEK 1991年

イメージサイズ  479×342mm  リトグラフ 額装価格: 400,000(税別)展示販売限定

QUIET CREEK

車で海岸に添って1周するのに1時間とかからない小さな半島が好きだ。
温暖な気候と適度に乾燥した空気が地上にはあり、シルエットがバナナの様でなく、ブドウのごとく、小さな入江が数多くあって、多くの船がよく手入れされて係留されている。
私の家は、その入江の最も海面に近い所に位置している。
家のテラス から20mぐらいの水面に、いつも小さな白いヨットが置いてあるのだが、ほとんど乗らずに、そのヨットが巻き込んで創り出す風景を目で楽しみながら、絵を描いている。
人嫌いの為か本当の友人は、数人しかいないのだが、その友人がたまにやってきて、私の仕事の邪魔をする。
仕方がないので酒を飲む。
酒とこの風景も良く合うものだと、酒の酔いで感心してしまう私を笑いながらも友人は再び酒を注ぐ……って!
こんなことがあったらいいなと思ってこんな絵を描いたのかもしれない。

THE DECK WHISPERED BY SEA BREEZE|汐風のささやくデッキ 1992年

イメージサイズ  478×670mm  リトグラフ 額装価格: 400,000(税別)展示販売限定

汐風のささやくデッキ

マイアミを何度も取材しているのに、こんな光景があることを知らなかった。
マイアミ・ビーチ・シティではごくごく、日常なので、マイアミ慣れしてしまっている私には発見が困難だったのかもしれない。
トロピカル・デコのホテル取材も終わって、正直言ってもう沢山だと思い、カメラも持たずにホテルの前のビーチに散歩に出た。
ボード・ウォークが長く続いていて、良く出来た素朴なストリート・ファニチャーが充分に配置されていて、この街の海と人のかかわりについての見識の高さが伺えて嬉しくなってしまった。
長いボード・ウォークに添って、ゆっくり、ゆっくりと歩いて行く。
海からの心地良いそよ風が頬ずりをして、何回も優しく接触して去って行く。
10分程ゆっくりと歩くとホテルの出店があってプール・サイドと、通りすがりの人々へのドリンクサービスを行なっていた。
白いビーチパラソルと白いテーブル、ビーチ・ボーイの様にカッコいいウェイターにビア・アメリカーナーを注文した。

MORNING GLOW 1994年

イメージサイズ  429×530mm リトグラフ 額装価格:  600,000(税別)展示販売限定

モーニング グローぼくの好きな、アメリカ北東部、ケープコッドの最も大西洋に突き出たポイントが、この美しいビーチだ。
いまから10年程以前に、この風景を描いている。
版画として、30枚余りをリトグラフで刷った。
発表後しばらくして売れてしまった。
単純な、良く目にするような風景なのに、予想をはるかに越えて、多くの人々に好かれてしまったようで、その後、このナイ作品へのラブ・コールが、10年程続いた。
ぼくの好きな、美しい海岸は、ふたたび、描くことによって、生まれ変わった。
STAY・GOLD…砂に残された足跡を人生の輝きに思えるようにと、金箔を貼った。
美しい海岸の夜明けのイメージは、またしてもラブ・コールが甦った。


イラストレーター45周年 鈴木英人の世界展

2025年でイラストレーター歴45年を迎える鈴木英人の世界展を京都高島屋で開催いたします。

会場では貴重なパントーン原画や新作版画に加え、英人が手がけたレコードジャケットなども展示しています。

会期:2025年6月11日(水)~16日(月)
営業時間:午前10時~午後8時[最終日午後6時終了]
会場:京都高島屋S.C. 7階 催会場

■鈴木英人 来場&サイン会
6月15日(日)午後3時~4時
※会期中、原画作品をお買上げいただいたお客様にサインをさしあげます。