鈴木英人の愛車でもあったポルシェ356は、新旧多くの作品のなかで描かれています。今回は鈴木英人の描くポルシェ作品を紹介します。

幻想の小径

幻想の小径

15年ほど遡る頃の別離の話から始めましょう。別れの相手は女性ではなく、長年連れ添ってくれた古いポルシェ(1955年型356スピードスター、赤色ボディ)を、ある事情のために手放す結果に至ってしまったことだ。別離の後2~3年、ひたすら絵を描いて過ごした日々も、夢に現れるのは赤いドレスの美しい姿をした彼女だった。そして更に13年、相変わらず手放した彼女は、夢の中で僕に元気な姿を見せてくれるが、しばらくしてクルージングが終わると消えてしまう優しいゴーストだった。時に別れづらい夜には、続きをみることも可能になっていた。数年の後、僕は、病に見舞われて入院生活をよぎなくされた。しかし彼女は病床の身にもゴーストしに現れた。郷子の林立するロング・アンド・ワインディング・ロードを、僕を乗せた赤いドレスの彼女は快音を響かせてクルーズ中、小高い丘の手前で静かに停止した。その行く手には馬を操る美しい女性が、道を横切ろうとして急ぐサラブレッドをたしなめていた。幻想の最中で、微動だに出来ずにいた僕を彼女は心地よいエンジン音で包み、先へと促した。やがて馬上の若い女は静かに去っていった。あっという間の出来事も、もうなかったように、彼女は僕を乗せたまま小高い丘の向こうの暁に惹かれるように走りだした。それから、その晩、病床の僕の中で何かが生まれ変わったと思った。翌日、病室で医師が、「病は下降線をたどっていますよ。」と囁いた。

2015年作(イメージサイズ475×345mm E.M.グラフ) 額装価格 198,000円
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波間に馳せる想い

波間に馳せる想い

2014年作(イメージサイズ471×334mm E.M.グラフ) 額装価格 198,000円
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歓迎された友人

歓迎された友人

”スティーヴィー ワンダーの I just call to say I love you ♪♪… が常時アメリカンFMで溢れていた1980年代、ぼくの友人でもある愛する車スピードスターに乗って、颯爽とビバリーヒルズの瀟洒な家に住む友人を訪ねた。 その人は、ポルシェのコレクターであり、古いタイプの356のレストアの名人でも有名だ。実は、ぼくのスピードスターも彼がオリジナルを見つけてくれて、フルレストアを1年間かけて完成させたホカホカの出来たてだったのだ。この日はコーチビルダーの家庭を訪問して、次に狙っている356カレラのお願いにやってきたのだ。1954年型のマイ・ベストフレンドなのだ。

2014年作(イメージサイズ434×360mm E.M.グラフ) 額装価格 198,000円
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快晴の南の島 2
快晴の南の島2

マイアミが車で半日、キーラーゴ(フロリダ州)に休憩で車を降りて、あたりを散策した。ダンスホールのあるステーキハウスを見つけランチに突入した。冷房がキンキンにきいていて冷房+ハンバーガー+ビールで大満足。その暗い店の窓からキーラーゴの大通りを見るとフレンド・シップ・インというお店の前に、ぼくの愛車が…と思ったが誰かのポルシェ356が美しく、またしてもおあつらえ向きのこの出来過ぎた光景に、シャッターは切られた。

2012年作(イメージサイズ468×326mm E.M.グラフ) 額装価格 220,000円
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ポルシェ356スピードスター 2
ポルシェ356スピードスター 2

サウスキャロライナ州チャールストン。アメリカ東海岸を南下して、ジョージア州サバナに隣接している、運河の多い、アメリカでも最も古い街並が残る美しい町である。1991年の夏の最中に、どうしてもこの美しくて古い街並を体験にしようと訪れた。ジャングルのように暑くて、ひどく湿気が高い。僕の体は、溢れ出る汗を恐れて、外気に触れるために車外に出ようとする気持ちを拒んで動こうとしない。ポルシェ・スリーフィフティーシックス(356)スピードスター、なんと美しき響きの名を持ったスポーツカーなのだろう。僕の最も好きな車だ。約20年程以前にアメリカで初めて目撃したこの赤いスポーツカーは、それ以来僕を魅了し続けて、奥の深い味わいは、未だかって他に類をみることがない程だ。そして、それから10数年を経た1991年の夏に、極度に高い湿気を纏って、僕の目前に予期せぬ驚きと劇的な出会いをもたらしてくれたのだ。18世紀の終わりと19世紀始めに出現して以来、その当時の美しい街並を保存してきたチャールストンにとっては、これ程に相応しい車が他にあろうはずがない。

2014年作(イメージサイズ280×540mm E.M.グラフ) 額装価格 220,000円
オンラインショップ(SOLD OUT)

神戸北野通り

神戸北野通り昔、神戸はコートダジュールのロケーションに似ているんだと耳にしたことがある。神戸と地中海、そして瀬戸内海が地形や気候も似ていて、…山が海岸線に近く、平野が少なく、まさにコートダジュールなのだそうだ。そんな神戸の六甲山のふもとの北野通りのゆるやかな坂を登っていく道すがら、いかにも洋風なヨーロッパの香りの漂うお店が軒を並べていて、やたらとエキゾチックな想いにかりたてられるのは、やはり、フランスのニースやカンヌの坂道に似ているからだろうか、…。少し潮風の混じった空気を楽しみながら、ゆっくりと2時間ぐらい歩いた。

当ギャラリー依頼作品
2013年作(イメージサイズ338×475mm E.M.グラフ) 額装価格 220,000円
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南カリフォルニアの休日2
南カリフォルニアの休日2

マイフレンドフォーエバー。ぼくのかわいい友人、LAからSant Barbaraまで2時間のランデヴーだ。KBIG104に音をもらって、放し飼いになった、この気分の良さは最高だった。こんなヤツがいるから描く気に なるのだといつも思う。なんて美しい車なんだろう。そしてなぜアメリカ製でないのか?西ドイツの車が、なぜアメリカ仕様などデザインをしたのか、それにし ても素晴らしいヤツだと、またしても深く惚れ込んだ。

2021年作(イメージサイズ337×455mm E.M.グラフ) 額装価格 220,000円
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